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人に伝える、難しさ
職人学
小関智弘
講談社 2003年

私は職人にあこがれている。
ただひたすら正確にものを創造する。
なんと素晴らしい仕事ではないか。

とはいえ、職人の仕事と私たちの日常とは大きくかけ離れている訳でしゃない。
職人とて失敗もするし、それが大きな成功に繋がったのはノーベル賞受賞の田中さんの「失敗」が有名である。
本来使うはずの薬品を使わず間違ってグリセリンを使って、質量分析の技術開発に結果的に飛躍的貢献をしたというもの。
そして田中さんは講演で、自分の研究方法は職人的だと言ったそうだ。
それに著者は驚き、そして納得する、
「理論がない場合には失敗を重ねるしかない。その中で、勘が養われると思います」
しかし現場で失敗すれば飛ぶのは激しい叱責や罵声である。
職人は何も教えない、技術を見て盗め
とはよくいわれるが、それにはちゃんと理屈が通っている。
罵声に嫌気がさしてやめるならそれまで。
教えてもらって、楽して自分の技術を高めることを考えているようではダメ。

良い職人は自分の技術がすぐれていることはもちろん、教え上手でもあるそうだ。
見込みがあり、なんとかして一人前の職人になりたいと志すものには惜しげもなく手の内をさらす。

人を育てることは、自分の子どもであっても難しいこと。
それでも人は、自分の何かしらを子どもなり部下なり後の人に伝えていくものが確かにあると私は思っている。
残らないようなものなら消えても構わないと投げていっていいものか。
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by a-tenar | 2006-09-29 14:07 |
模写といえど
よみがえる最後の晩餐
片桐頼継 アメリア・アレナス
講談社 2000年

私は番組を見ていませんでしたが、充分面白い内容でした。
「最後の晩餐」のイエスの顔が未完成だった、なんて今までしらなかったし
イエスとそのお弟子12人の絵、までは知っていてもどこに誰がいてテーブルには何が載っていたか、背景はどうだったのかなんて考えたこともなかったので、いちいち驚いてしまいました。

それに驚いたのは、これほどの名画となると模写はいくついかあるのに、
完全なコピーはないということ。
この時代に生きている私にとって、模写=コピー、量産できる、と単純に思い込んでいましたが絵画の模写は当たり前のことながら絵描きが絵を写し取るためどうしたって絵描きの個性が模写にも現れてしまいます。
同じ文章を写し取っても筆跡が違うように、絵にも個性が出るんですね。
だから模写といっても、絵描きやその依頼主がどこに力点を置いたかで仕上がりがオリジナルとはちがってしまう、意図的でなくても。
こんな当たり前のことに、なんで今まで気がつかなかったんだろう。
個性なんて放っておいても、現れているものなのでは。
それに気がついているか、いないか。

「どこにユダがいるか」
も結構面白く読みました。

ダ・ヴィンチって人は、どんな人だったんだろう。
生きている間の彼につかの間、思いを馳せました。b0006210_21101468.jpg
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by a-tenar | 2006-09-28 21:10 |
「七人のおたく」
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七人のおたく cult seven
監督:山田大樹
出演:南原清隆、内村光良、江口洋介、山口智子、益岡徹、武田真治、浅野麻衣子
1992年 日本

前回の哀愁満ちた「白いカラス」と違い、これは子どもたちと笑おうと思って借りてきたもの。
ややや、Macの一体型(もはや死語)を抱えた森高千里の夫。
山奥で電線引っ張り、Macが機動して「Happy Mac」が出た途端の笑顔に、大笑い。
ふるえるほどじゃないけど、それなりに笑える科白がいくつもあって、子どもたちと3回くらい見ています。
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by a-tenar | 2006-09-27 19:50 | Movies
「白いカラス」
白いカラス The Human Stain
監督: ロバート・ベントン
出演:ニコール・キッドマン、アンソニー・ホプキンス、エド・ハリス、ゲイリー・シニーズ
2003年 アメリカ

この映画の二コール・キッドマンの評判は聞いていましたが、これほどとは。
ちょっとした仕草、まなざしに色気がこぼれ出て、これならアンソニー・ホプキンスがくらくらっとくるのは無理もない。
脇のエド・ハリスも、ゲイリー・シニーズも大好きな役者を揃えて、大人の切ない恋を盛り上げて(邪魔して?)いました。

結婚しても語れない秘密。
事故とわかっていても、相手を責めずにはいられない。
誰よりも近い他人だけど、だからこそ話せない許せないってことでしょうか。
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by a-tenar | 2006-09-26 22:22 | Movies
哀しみと怒りの交錯
クラッシュCrash
監督:ポール・ハギス
主演:サンドラ・ブロック ドン・チードル マット・ディロン
アメリカ 2004年

冒頭のライトのような、きれいなシーンから引き込まれました。
LAの夜景かと思いきや、それはイメージで車のタイヤ跡のついた凍った路面。
登場人物が複数なのでわかりにくいのですが、ラストに向けてどんどんストーリーが1本にまとまっている手腕はうなりました。

なんでマット・ディロンがこんな汚れ役やったのかな、と不思議に思ってしまいました。
有名プロデューサーの妻に対するセクハラ行為、同じ女性として虫酸が走るほどの嫌悪感。
こんな思いをしているのに、横の夫は何も助けてくれなかった!
さァ一番やらかすぞ、ほれヒールを叩きつけろ、と言ったらホントに床にたたきつけていたので、すっとしました(笑)。
この夫婦の喧嘩はまるでうちの夫婦喧嘩のようでした・・・。
その後この妻と再開することになったマット・ディロン。
この時の彼はしびれます!
再会して激しく彼を拒否する彼女、でも助けて見捨てないで、そして去っていく彼女の目。サンディ・ニュートンがとてもうまいです。

鍵屋のダニエルの娘への接し方、こんな父親に育てられた娘は幸せです。
透明のマント、とてもいいエピソードでした。

一人の人間が見せるいろんな顔。
都会で生きていくハードさ、確かに衣食住には困らないけど
怒り、哀しみ、これらはサンドラ・ブロック言うところの
「毎日何かに腹をたて」。
差別を受けていると感じている人が、相手が変われば自分が今度は差別発言をする立場になったり。
憎しみ、かーっとなって銃で撃った結果は撃った側にも撃たれた側にも不幸しか残らない。
誰が信頼できるか、誰が裏切るか。
不安、孤独、喧嘩できる仲、いきなり銃をつきつけられる出会い。
そして出会いと、別れがあまりにも早いテンポで毎日が暮れていくLA。

哀しいけれど暗くはなく、秋の1日いい映画との出会いで至福の時を過ごしました。
音楽もいいものでした。
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by a-tenar | 2006-09-24 21:45 | Movies
女の幸せと男の幸せの違いは何か
女の一生 杉村春子の生涯
新藤 兼人 岩波書店 2002年

「私は一時としても愛人がいなくては生きてゆけないような女です。私は惚れて惚れられて、それが人生のように思えます。誰れにも愛されず、誰れも好きになれなくなったとき、そのときは、扮する役をの人物を愛することも、舞台への愛もすべて失ってしまったときでしょう。
女でありながら、女でないような女優にはなりたくありません。愛して愛されることが女優としても、その第一歩ではないでしょうか」本書171ページ抜粋

同じ女としては共感するものと、女優だからできることなのかとも思います。
若い女の子たちはあまりにも簡単に愛される、ということを考えているような気がして、それは「女という病」だと思いました。
私の世代になってくると、役割において必要とされることが多く、女として愛し愛されそれが女、ということばは耳が痛い。

では男にとっては、愛し愛されることは必要ないのでしょうか。
女にとって必要な愛は、男には必要ないとも思えないし・・・。

ちょっと混乱気味ですね。
まとまったら、書き直すことにします。
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by a-tenar | 2006-09-23 22:01 |
続「エトワール」
エトワール パリ・オペラ座の舞台裏
2002年 プチグラパブリッシング

仕事が忙しくて、なかなか図書館へ行けませんでした。
今日なんとか時間を見つけて行ったら、この本が飛び込んできてご縁を感じました。

映画で、モノクロ写真が効果的にしかも美しく挿入されていましたが、この本はその写真の数々にインタビューが活字であります。
でも私には写真は映画の方がインパクトがあるような気がします。
だかと言ってこの本が映画のガイドブックという感じでもなく、見終わった後の補足というわけでもなく。

しかし、何度見てもダンサーたちのことばに私は重みを感じます。
私は芸術関係を志して夢破れたクチなので、芸術でトップに立った人間にとりわけ敏感なのかもしれません。
それでも彼らのことばに、自分が挫折した理由も、そして人生の重みを等しく感じたということだけは確かです。
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by a-tenar | 2006-09-20 21:29 |
見に行きたい、残念
太陽 Solnze(英題The Sun
監督:アレクサンドル・ソクーロフ
出演イッセー尾形 桃井かおり Robert Dawson 佐野史郎 
製作国ロシア・イタリア・フランス、2005年

これ、日本公開と聞いてからずーっと見たいと思っていたんですが、ついにダメになりそう。
明日見るはずだったのに、仕事入りました・・・。

イッセー尾形は芸達者だから絶対はずれないと思ったし、桃井かおりの皇后とくれば。
それに昭和天皇の苦悩、と日本ではタブーになりかねない主題の映画を今のところ大ヒット。
お願い、どこかで引き続きやってくれないでしょうか。
これはフィクションかもしれませんが、神として生きることを定められ人として生を終えた「人の生き方」を想像だけでもしてみたい。
その人の周りにいた人たちの苦悩はどんなものだったのか。
未だ厚い「菊のカーテン」の内側。
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by a-tenar | 2006-09-20 19:26 | Movies
苦しいのかなんなのか
エトワール
原題: Tout pres des etoiles
監督: ニルス・タヴェルニエ
撮影: ドミニク・ル・リゴルー
モノクロスチール写真: ヴァンサン・テシエ
2000年 フランス

タイトルは忘れたけど、ダンサーの生活を描いた映画を見たいと思って探していたら、見つかった2本のうち借りれたのがこれ。
パリ・オペラ座バレエ団ってシルヴィ・ギエム、パトリック・デュボンがいたってことくらいしか知りません。
だからバレエ団所属のダンサーの階級とか、4回くらい見た今もまだごっちゃになっているけど、何回見ても引き入れられます。
クラシックもモダンもこなすの、ってバレエに限らず難しいのに、ここのダンサーたちは同じシーズン内でクラシック古典の「ラ・シルフィード」と「白鳥の湖」、ベジャール振付の「第九交響曲」にキリアン振付の「優しい嘘」をこなさなければならなかったりします。
見ていて、うわ~です。
でもそんなの当たり前だし、怪我でも事故でも踊れなければチャンスを狙っている代役が控えているから、徹底した自己管理に明け暮れて
「この世界、弱ければ生き残れない」
一分の隙も見せません。
バレエ・ダンサーだから踊る才の他、容貌や教養も必要。
付属の学校時代からふるいにかけられ、その中で入団を果たしいわば選ばれし人々の中でもまた熾烈なエリート競争。
最高位の「エトワール」を拝命してもなお、
「怖い」
「あの緊張・・・!」
「孤独」
「バレエをやめたいと思ったほど」
の恐怖と孤独を味わうなんていやはや底知れない、て感じです。
年齢以上の敬意を払われているのじゃないか。
「(必要なら)精神的・肉体的なケアをするのは、才能があるからです」
一にも才能、ニにも才能、才能があるからこそ大事にする、と言い切るバレエ団の幹部。
ここはバレエに魂を売った鬼たちの集団だ・・・。

そんな中で、「踊りも大事だけど人生が大事」と言うダンサー達も。
「第二の人生は母親って仕事はどう?フル・タイムで」
バレエで燃焼した後は母親業を選ぶと答える彼女たちに、日本とは違うなあと思います。
今の人たちはそうかもしれないけど、まだまだ私たちの世代って親を職業として捕らえることなんてなかったのでは。
女性がキャリアを極め、なお出産できるのが当たり前になるといいのに。

ダンサーとしては、ミテキ・クドーがとてもすてき。
彼女の舞台を見てみたい!
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by a-tenar | 2006-09-19 19:39 | Movies
ぞわぞわ感
女という病
中村うさぎ
新潮社 2005年

いろんな女性の「事件を起こした」心理を、中村うさぎが迫ります。
ちょっと入り込み過ぎる?と思うこともあるにはあり。
きちんと最初に作者が断ってはいますが。
私は名古屋の「ひらひらさん」事件は、作者の思いいれのようなものを感じますが、
私はちょっと違うような気がします。

私が印象に残っているのは、託児施設の園長が預かっていた子どもたちを虐待、殺人まで至った女性のケース。
彼女の耳にはじーじーいう蝉の声ばかり・・・。
この感覚にぞわぞわしました。
それから医師の婚約者に殺された患者女性のケース、
エリート医師の妻が殺されたケースには、
なんだか私もそこにいて見ていたようなリアルなイメージを持ちました。
私もコギレイに飾り付けられた家の玄関や、ガーデニングを見ると
なんと形容していいのか、まあぞわぞわ感が触発されてはいました。
お話を相手と一緒に作り上げて虚構の関係を生きる、とでもいうのでしょうか。
「和歌山の二大悪女」、もインパクトを感じました。

私にはもっとすばらしい人生を送れるはず
私にはもっとすてきな人が現れる、
私は資格がある、
私にないものはチャンスだけ・・・・。

「女という病」は確かにあると思います。
物欲の強さ、過剰な身勝手さ、などをイメージすることもありますが、
愛されることは女として最高の栄誉で、
自分はそれにふさわしいという意識を持っていればこの病気にかかっている可能性、大。
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by a-tenar | 2006-09-02 14:17 |
  

おいしいお酒と、すてきな何かと。
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